1994年に初施行された中国の「消費者権益保護法」。
初施行から20年経った2014年3月15日からは改正法が施行されて、欠陥商品や誇大広告などへの販売者の責任を明確にするべく、インターネットショッピングで購入した商品を一定期間内に返品(交換)できるクーリングオフ制度が盛り込まれました。
この件に関しては、2014年9~10月頃に増山がコラム書いたことがありまして、こちらも参考になると思います。
cf: 【前編】中国の消費者権益保護法 – 消費者向けビジネスの変化にどう対処? (MAKEPO)
【後編】中国の消費者権益保護法 – 改訂後半年の変化・そして新たな動き (MAKEPO)
この文章書いていた頃は、まだ淘宝網を開店する前で、概念は分かっていたものの、肌身の体験が圧倒的に少なく、自分で書いておいてナンですが、あまり説得力がありませんでした。
(恐らく、今までこの文章の存在は殆ど誰も知らなかったでしょう)
しかし、実際に私は淘宝網で販売していると同時に、顧客対応も外注せず、中国語で1人で対応しているので、生身の消費者が何を考えているのかというのがダイレクトに分かります。
改正後、約2年近くなってきて、このクーリングオフ制度の浸透率がどんどん上がっている事が実感できます。
顧客側もそれを踏まえた上で、結構好き勝手言ってきます。
実際にあった返品返金要求の実例
【クレーム】商品を受け取ったが、開封して使ったら壊れやがった。こんな欠陥商品送りやがって!返品・返金だ!
【結論】クーリングオフ認めず
日本製の変圧器を販売。
しかし、この変圧器が特殊な品で、どんな家電でも使えるものではない。
どの家電に使えて、どの家電には使えないという説明を予め商品説明に入れていたが、購入者は全く読まなかった模様。
(質問もしてこなかった)
購入者は電気毛布に使いたかったようだが、説明には電気毛布は使用できないと明確に書いていた。
無視して購入者が使った結果、変圧器が爆発。電気毛布の配線がショートして使い物にならなくなった。
これは、日本で使うための変圧器なんじゃないか?欠陥商品を送ってきたんだろう。
ということで返金要求。
そもそも、使える家電・使えない家電を明記したものを見なかったのは購入者の責任。製品の正確な欠陥を販売者が証明できない以上、全額販売者へ渡すべきでクーリングオフに該当しない。
【クレーム】中国は220Vなのに、100Vの商品を売るのはおかしい。中華人民共和国で使えない製品を売るのは異常。返金だ!
【結論】クーリングオフは認めなかったが、購入者が受け取り拒否をしたため全額返金にならず
日本メーカーの100V電圧の電気ケトルを販売。
特に何も質問してこなかったので、そのまま発送したところ、
発送後になって、「ケトルの電圧は何ボルトだ?」と聞いてきて、
100Vと答えたところ、中華人民共和国で使えないのでキャンセルしたいと要求。
こちらはクーリングオフは適用されないという理由で断ったが、購入者は中国到着後サインをせずにそのまま受け取り拒否して差し戻し。
もし、一旦サインをしていたのであればクーリングオフの不適用が認められて、全額販売者へ渡っていたが、拒否を理由に全額の支払いが認められず、返送経費だけ販売者負担。
(実はEMSで発送して拒否に遭った場合の返送費の負担はなしだが、私が話をでっち上げて相手を脅した。もし、配送時の送料を別途設定していればその分も返金になったが、送料込みにしておらずその分は認められなかった。しかしクーリングオフは認められていない)
なぜ、クーリングオフを認めないのか?中国でクーリングオフ制度があるんじゃないの?
上の2例で、中国でクーリングオフ制度があるにも関わらず、販売者である私が適用を拒否。
購入者が淘宝網へクレームを入れるも、クーリングオフ制度の適用は認められませんでした。
淘宝網では規約として、クーリングオフが適用できる範囲・できない範囲・できないよう選択できる範囲を定めています。
cf: “七天无理由退货”支持范围、处理流程及条件 (淘宝網・中国語)
クーリングオフ適用外
- 消費者がオーダーメイドで製作させたもの
- 家禽・鮮魚など腐敗しやすいもの
- オンラインでダウンロードしたもの・消費者が開封した音楽ソフト・コンピュータソフト等のデジタル商品
- 交付済みの新聞・定期刊行物
- サービス系商品: 家政サービスや翻訳サービスなど
- 個人の不要品の譲渡
クーリングオフ適用選択可能(デフォルトでは適用だが、販売者が不適用を選択できる)
- 非日用品: マンション・土地・新車・ウェブサーバー・オフィス用品など
- 代購サービス: 仕入れ地が海外または香港・マカオ・台湾で中国で在庫していない商品
- 中古品
- アダルトグッズ(コンドームを除く)
- 衣服
- 古美術品
- 食品・健康食品・ペットフード/医療品など
- 衣服
- 宝飾品
- 家具・家電製品
私の場合は、クーリングオフ適用選択可能の第2項目めの「代購サービス」に該当。
一部の販売者はクーリングオフに応じているところもありますが、私の店舗では、
海外交易という性質上、商品が欠品の場合を除いて、一切のキャンセル・返金・返品・交換を認めない
と定義しています。
それでも、いろんな理由で返品・返金になる事例もありますが、クーリングオフという理由では認めていないということですね。
これらに当てはまらなければ、どんな理由であれ、クーリングオフを認めて返送の運賃も販売者負担ですから、中国で主に中国の商品を販売している業者はいろいろ大変だと思います。
天猫(天猫国際)でも細かくクーリングオフの適用・不適用要件が規定されている
昨今、「越境EC」がトレンドになってきていて、企業のみなさんが天猫(Tmall)や天猫国際へ出店されている方も多いでしょう。
これらについても、淘宝網よりも細かい要件が規定されています。
cf: 天猫七天无理由退换货服务支持条件、处理流程及类目 (天猫・中国語)
サービス系の商品のクーリングオフ適用外は多いですが、クーリングオフは認めるが、再販売に影響しないよう包装がしっかりされていて、商品の表面に傷がないなどの条件が設定されています。
中国では发票(ファーピャオ)と呼ばれる領収証は結構大事で、紛失した場合の税金は購入者負担など、BtoCはいろいろ気を使わなければいけないことが多いようです。
年々、消費者の権利が強くなって、難しい舵取りが迫られていますが、法規・規定をしっかりと理解して、不利が少ないように運営を進めたいところです。